プロローグ

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「おっ、佐野っち今帰り?」 営業部を出たところで同僚の今口(イマ)に声を掛けられた。 新人研修で同じグループになって以来、配属先は営業部と検査技術部と違うものの営業所は同じになって2年目。技術屋志望だっただけあって理系は大の得意。検査のほうの担当なのに薬品もよく理解していて頼れるんだよね。しかも長身で何かとモテる。明日行くY病院の看護師にもファンがいたな。 「少し飲まないか?」 「いいね。いつもの所か」 「ああ」 エレベーターで1階まで降り、タイムレコーダーの退勤を押してICチップ入りの職員証をリーダーにかざす。イマも同じように退勤処理をして二人会社を出た。 駅前のロータリーから一つ路地を入ると居酒屋が建ち並ぶ。その内の一軒、全国チェーンの安い・旨いが売りのお店がいつもの定番。接待なら少々お高い小料理屋も 使う所だが、会社経費にならない晩飯は、安いが一番。ここは味も悪くないからイマと飲むのはここばかり。全メニュー制覇もとっくに終わってる。 「とりあえず生2つでいいよな。あと…」 適当に注文を済ませ、1心地つく。 「明日、Y病院だろ。」 イマにそう聞かれて、そんなこと話したっけ?と考える。 「昨日、機械のメンテで行ったんだよ。」
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