最後の晩餐

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暗闇の中。 誰かのいびきが響いている。 わたしは、目を閉じ、今日起きたことを思い出していた。 ―――しかし、怖ろしかったな。 金をよこせと叫ぶ、叔父叔母。 人って、あんな風になってしまうんだ。 あの形相を思い出す。 顔を真っ赤にして、怒号を発していた。 ―――お金が無くても、あんな風に落ちぶれたくないな。 くるっと横になり、眠っている康君の顔を見る。 ―――わたしよりも、康君の方が、ずっとずっと、ショックだったろうな。 幼い頃から信頼してきた叔父叔母にあんな態度取られて。 上を向き、すーすーと眠っている彼。 布団から、そっと手を伸ばし、彼の手を握る。 ―――わたしは、あんな風に、貴方を裏切ったりしないからね。 ごつごつしたその手をぎゅっと握り、瞼を閉じた。
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