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「本当に大丈夫?」
「ああ……うん。ごめんね」
「謝んな……」
別にユウはミユキに言ったわけでもないだろうに、俯いたままのミユキがボソリと小さい声で言う。
「ごめんね」
苦笑いを浮かべて、もう一度ユウは謝る。それについてミユキは今度は文句を言わない。
「ええと……これで良かったのかな?」
「うん。トモハルにはたくさん苦労をかけてしまったね。ごめん」
「これくらいなんでもないよ。でも……」
ミユキを抑えるために仲介役を買って出たのに、結果は見事にミユキは大爆発してしまった。これでは何の役にも立っていない。
それに、まだ事も解決していない。
「わかってる。彼女の先輩には僕から直接話すよ」
「え? でもそれって、ユウは女の子が苦手だし……」
「逃げんなって、言われたからね」
ユウはまた苦笑い。でも、何故かそれが少し嬉しそうにも見える。
「頑張ってみるよ。確かに僕は、逃げていたと思うから」
「ユウ……」
何も言わず俯いたままで表情が見えないミユキの肩を支え、遠くを見つめるユウを見る。
「ワンっ!」
夜が始まろうとしている雲が少ない空の下、賢いコーギーがまた一度だけ吠えた。
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