難解な依頼は始まりに過ぎない

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太陽の光がこれでもかという位照りつける真夏の午後、晃と耀音は聞き込みを行った。とはいっても桃香の目撃情報などひとつも出てこない。 大体本当に桃香は居なくなったのか。事務所に来ていた桃香のコピーは一言も話さなかったが、コピーは自分が「桃香のコピー」だと言ったのか、あるいは否定したのか。それさえもわからない。 「依頼受けるの決まったら急に帰っちまったからなぁ」 「ああ依頼人の事ですか。やっぱりもう一度会わないと行けませんよね。……それより晃さん。本当にそれ、大丈夫なんですか」 「なにがだ?」 「とぼけないで下さいよ! そんなコート来て……汗だらだらじゃないですか」 「うるさい! 調査に出るときにはこれなんだよ」 「倒れても知りませんよ。あ、後臭いんであんまり近づいて来ないでくださいね」 わかったわかった、と晃は耀音を手で追い払うようにしていると、玄関先で水を巻いているおばさんが目にとまった。 「こんにちは。打ち水ですか」 「今日は暑いからね。まあこんなことしてもあんまり意味はないけど」 「そうですね。打ち水は昼にやるより朝にやった方がいい。昼にやると周囲の温度は一時的に下がりますが逆に水が一気に蒸発して蒸し暑くなってしまいますよ。大体打ち水というのは──」 おばさんは晃の急な説明に呆気にとられたのかポカンとしていた。それを見て耀音は慌てて晃の話を中断させおばさんに自分達の素性と、桃香を探している旨を伝えた。
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