難解な依頼は始まりに過ぎない

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「この子は──確かに姿、形は娘の桃香(ももか)何ですが、その、何と言っていいのか…… でも、とにかく桃香じゃないんです」 佳菜子は言い切った後、あ、と思い出したように付け足した。 「桃香の能力はコピーです。」 「コ、コピーですか……それで娘さんは自分自身をコピーしたとでも?」 晃は困惑というよりはもはや迷惑な顔に近くなっている。佳菜子はそれを見かねてか、いや、そうなることを予想していたようにすっと札束を机に置いた。 「前金で10万出します。もし見つけられたらさらに20万払います。」 「いや、お金の問題ではなく……そう言うことはまず警察に言った方が」 佳菜子は10万円でも釣られなかったのを意外に思ったのか、一瞬言葉に詰まった後、怒ったように 「そんな。どうやって説明するんですか。……こんな貧乏探偵じゃなきゃ話も聞いてくれませんよ」 いつ晃はキレるのだろうか。耀音はそれに興味を持ち始めた。 「いくら何でも貧乏と直接いうのは失礼ではありませんか?」 晃は語尾を強く言って凄んで見せたが、佳菜子にはきかなかったようだ。佳菜子は不機嫌な顔で周りを見渡し 「いえ、だって……部屋も……あれですし。そこの女の子の髪の毛の色は何なんですか?銀色って」 「悪いですか」 耀音は頬を膨らませて、怒った振りをしていると晃にはそう見えた。きっと何度も同じ事を言われ続けてきたのだろう。耀音はなかなか可愛いと思うのだが、性格がすこぶる悪く細かく言えば切りがないのだが──一言で言うとわがままだと晃は思っている。
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