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何故か今日はいつもと違っていた。足を踏み入れた瞬間、そうだと分かった。
公園。まあ、いわゆるノーマルな公園だ。真ん中に噴水なんかあったりしてオシャレなこの場所は、公園のくせして遊具と呼べるものがあまりない。あるのは、誰が遊ぶんだってくらい錆びたブランコと、しょぼい滑り台くらいなものだ。だから、子どもなんて滅多に来ないし、そもそも大人、というか誰も来ない場所だ。
で、いつも通りこの公園に棲みついている猫にエサをやろうとやってきたのだが、どうやら珍しいことに先客がいるようだった。時刻は16時くらい。既に放課後だから、ここに俺と同じ高校の制服を着た連中がいてもおかしなことはない。ない、のだが……。
「なあ有栖川よぉ、世の中不公平だと思わねえか?」
大柄な男子生徒が、有栖川と呼ばれた男子に詰め寄った。あのでかいやつ、俺も見た事がある。確かここらでも有名な不良高校生で、名前は確か寺崎だったか。まあ、そんなことはどうでもいいんだが、何故その寺崎が何人もの男子生徒を引き連れて有栖川に迫っているのか。
「確かに、公平だとは思わないけどね」
男とも女ともとれるようなハスキーボイスで応えた有栖川は、俺と同じクラスの人間だ。同じクラスだが、ほとんど喋ったことがない、というか、クラスの男子ほとんどが有栖川と喋ったことがないんじゃないだろうか。それくらい彼は男子達にうとまれていた。それは何故か。簡単なことだ。有栖川が超のつくイケメンだからだ。有栖川も男子達なんてどうでもいいかのように、いつも女子連中と仲良くしている。つまり、有栖川には男子の友達がいない。
「お前のそのツラ、整い過ぎててきもいんだよ」
「それは嫌味なのかい? それとも褒めてくれているのかな?」
寺崎の悪口に平然として返す有栖川は凄いなぁなんて思いながら、俺はどうしようか考えていた。今日も猫のみーちゃんにエサをやってちょっとだけじゃれあって帰ろうとしていたはずなのに、よりにもよって嫌な場面に遭遇したものだ。
複数人で有栖川を囲む寺崎と男子生徒達は、明らかにいきり立っている。マジでブチ切れ5秒前略してMB5だ。
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