Prologue

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「いちいち癇に障る野郎だなてめぇは……!」 あ、ついに切れたかなんて考える暇もなく、寺崎の拳が有栖川の顔面目掛けて放たれた。さすがはここいらじゃ有名な不良さんだ。キレのあるストレートを繰り出しやがる。だが、そのパンチは空しく空を切った。 「っと、いきなり手を出すなんておっかないな。というか、僕がなにをしたっていうんだい? 君に殴られるいわれはないと思うけど」 「あぁん? そいつは悪かったな。ついついその綺麗なツラをメチャクチャにしてやりたい衝動に駆られちまったんだ。反省してる……ぜ!」 そんなことを言いながら、今度は蹴りですか。さすが寺崎さん。不良の鑑だな。だがしかし、これも有栖川には当たらなかった。なんて運動神経だ。あの距離からの蹴りを避けるとかありえねぇ。 「ちっ、多少はやるみてぇだなぁオイ。でもよぉ、こちとら13人いるんだ。いくらお前が強かろうが多勢に無勢ってやつだろ」 「まさか僕1人にそんな大勢の人間を連れてくるなんて、君、案外臆病なんだね」 「けっ、どうとでもいいやがれ。てめえが多少は出来ることは知ってたからなぁ。ちゃーんと準備をしてきたのさ。偉いだろ?」 「なるほど。用意周到ってわけだ」 有栖川はやれやれといった感じで頭をかいた。あの状況でよくあんな余裕な態度でいられるな。伊達にイケメン王子と言われてはいないな。関係ないか。 ……てか、ぶっちゃけ俺ここから消えた方がよくね? なんつーかほら、これから始まるであろう喧嘩というかあの人数だからリンチになりそうだけど、そんな場面見たくないし。公園見渡したところみーちゃんもいないし。うん。帰ろう。エサの小魚無駄になっちゃったけど、まあいいか。 公園に背を向け、一歩踏み出そうとした瞬間、どうやら始まったようだった。だが、俺は振り返らない。そう決めてたんだけどなぁ。 気付いたらみーちゃん用の小魚の袋を制服のポケットの中にしまい、駆けだしていた。
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