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「お前みたいな下衆野郎には……っ」
寺崎の右ストレートをしゃがんでかわし、そのバネを利用して飛び上がる。これぞ必殺――
「ガゼルパンチ!」
「ごぁ!?」
ゴシャァ! というちょっとやば目な音を立てながら、寺崎はリングならぬ地面に沈んでいった。
「――の刑がお似合いだ」
パンパンと手を払いながら、俺は動かぬ寺崎にそう言った。
さすがに顎はまずかったかなと思いながらも、有栖川の方を見ると、
「うわぁ……」
ちょうど最後の1人に蹴りをお見舞いしていた。男子としてはそんなに身長も高くないし、体つきも華奢だってのに、すげえな。あの数の人間を1人でのしちまうなんて、あいつかなり強かったんだな。もしかしたら、俺の助けなんていらなかったんじゃないか? まあ、助けたつもりはないけどさ。
有栖川は悠然たる態度でこちらに歩いてきた。意識のない寺崎以外の男子生徒達は皆、有栖川にビビって逃げ出した。有栖川は特別追うようなこともせず、俺の目の前までやって来てにっこりと笑った。
「ありがとう。君のおかげで助かったよ」
「俺なんかいなくても大丈夫だったみたいだけどな」
「そんなことないさ。その君が倒した男が一番厄介だったからね。彼がいたら僕もやばかった」
「あ、そうなん? てか、なんでお前こいつらに絡まれてたわけ?」
「ああ、僕が女の子と仲良くしているのが気に食わないみたいだよ」
「……そういうことね」
うわあ、くだらねー。ただの嫉妬じゃないか。でもまあ、普通の男子だったら嫉むよなそりゃ。俺も羨ましいと思ってたし。だからといってこんなリンチまがいなことはしないけどな。
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