秋の田の

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「はあっ……はあっ…」 夜の京を駆ける一人の少女。時おり、後ろを振り向き追っ手が迫りつつあることを知り、必死に疲れた足を急がせる。 「追え、逃がすな!!」 後ろから聞こえる足音と声は次第に大きくなり、藤原薫の背後にまで迫る。 薫は咄嗟に右へ曲がり、物影に隠れる。 身を縮め、なるべく息を静かに行う。 ばたばたばたっ! 足音も声も遠くへ消えて行くと薫はほっと一息つく。 薫が立ち上がろうとすると、手を捕まえられる。 「まったく、こんなとこに居たとはな…」 布で口元を隠し、ぎらぎらと野望に光る目に薫は悲鳴をあげようとするが、男に口を塞がれる。 「おっと、助けは来ねえよ…」 「んっ……んー!」 男は懐から鋭い刃物を取り出す。薫の紺色の瞳から涙が溢れる。 「さあ、死んでもら……」 薫の拘束が緩み、ゆらりと男が地面に倒れる。刃物が地面に落ちて、遠くへ転がる。 男の後ろに居たのは、黒髪を短く切り揃えた少女だった。 広く開いた振袖から白い大蛇がちろちろと舌を出す。 「君は………?」
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