章間(2) 死刑囚、佐伯 雅孝

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ただ、最後に家族で温泉に行こうと提案しました。 私の賭けでした。 運転は私がしました。 助手席には父、後部座席には母。 両親には、導眠剤入りの飲み物を飲ませ。 眠りを誘うような安全運転で 温泉街に向かいました。 両親が寝入ったのを確認して 下り坂の続く途中のバス停のある 退避スペースに静かに車を停め 自分の荷物だけ下ろし サイドブレーキを戻し Nレンジにギアを合わせました。 そのまま私は車を降り、少しだけ車を押しました。 ゆっくり動き始める車 下りで少しずつ加速していきました。 離れた所で爆発音がして黒い煙が上がりました。 父のシートベルトは外しておきました。 サイレンが聞こえました。 それを聞いた後、タイミングよく来たバスに 何食わぬ顔で乗り込み、その場をあとにしました。 事故として処理されたのは、のちに聞きました。 それでも両親は私が殺したのです。 でも、これで、やっと女性として 誰に気兼ねなく、生きられる。
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