第1章

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じっと立つ 雅と その前に 退屈そうに 座る俺 2人の影が確実に増えたパトカーの放つ 赤色灯の光に浮かびは消えする。 「見付けたら……どうするの?」 さっきまでの俺を蔑んでた雰囲気は消え 逆に言い知れぬ怒気を含んだ雰囲気を醸し出す 「…依頼人に 居場所を教える…… それが依頼だからな…」 脚の間の地面を見つめる そこに 近付いてくる雅の足先 「本当に……それだけね?」 怒気も消えた雅の声 「………」 何も 言えない 本当に、それだけで済ませられるのか?俺は 「…この男も重要参考人なので見つけましたら捜査協力をお願いします。」 姿勢を正し、きれいな角度のお辞儀をする雅 「……それは 俺には 出来ないが 依頼人には 伝えておく…… じゃあ もう いいな? 俺は 帰るぞ? 居場所は あのボロアパートだ…」 立ち上がり 立ち去る俺 その背中に向かい 雅は 一度上げた頭を 再び 大きく 下げる その 背中が 俺に対するものじゃない 怒りに 小刻みに 震えているのを 俺も他の誰も気付かなかった……
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