第2章

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「死ぬな 死ぬんじゃねえぞ…」 そんな 俺の祈りも 虚しく朝方には 体に付けられていた 計器類は みな 外され 病院の地下の霊安室に その身を 移された…… 事件的には こうだ ある男が女を ナイフで刺そうとしていた所を たまたま その場に居合わせた 美咲が身を挺し 庇い 変わりに刺された 割と賑わっていた 白昼のショッピングモールで 起きた事件 実咲と 一緒にその場に居た 雅は すぐに その男を 取り押さえようとしたが 辺りが 大混乱になり 取り逃がしてしまった 非番だったから 強いお咎めは 無いだろう…… 美咲の身内は 1人娘の菫だけ その菫も まだ 二歳になったばかりだと 言うのに…… 『カチャ』 霊安室のドアが 静かに開く そこから 入ってきたのは 二歳の菫を抱いた 初老の女性 俺は 立ち上がり 深く頭を下げる 「この度は……」 俺が そう 言い掛けると 「いいよ 堅苦しい挨拶は……綺麗な寝顔だねぇ……」 初老の女性 井江森 香枝(いえもり かえ)は そう呟く 「菫を 置いて逝ってしまうなんて……無念だろうねぇ…」
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