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その日は珍しく始業時間30分前に学校についた。いつもは遅刻の常習犯なのだが…
思い返してみればその日から運命の歯車が少しずつ狂っていったように思う。
教室に入ると女子生徒が一人、机に突っ伏していた。彼女の名前は沙紀。男っぽい性格で女子よりも男子に仲のいい奴が多いという変わった奴だった。
「沙紀、おはよう」
声をかけるとゆっくりと顔を上げる。
「珍しいね、いつも遅刻なのに」
「なんだか早く目が覚めてさ、暇だから来た」
「そう」
気だるそうにいうとまた机にへばりついてしまった。
「どしたの?珍しく元気ないな。」
彼女はうーんと唸ったまま顔も上げない。
「なんだよ、なんか悩みがあるのか?俺が相談にのってやるよ」
「そんなんじゃないって、いいからほっといて」
「いや、俺は今日は相談されたい日なんだよ。遠慮するなって」
それでも顔を上げない彼女を横目で見ながら自分の机にバッグを置くと、沙紀の前の席にある椅子に座る。
「沙紀さーん、朝ですよー!」
「もう、うっさいな!悩みとかじゃなくてあの日なんだよ!」
「あの日?」
反応なし。
「あの日ってどの日、緑の日?」
反応なし。
めげずに祝日を連呼していると彼女はついに顔をあげていった。
「あの日はあの日なの!分からなかったらお母さんに聞いてみなよ!」
あまりの剣幕にびっくりしてしまう。沙紀はいつもやかましく言っても怒らず、くだらない話にも乗ってくるノリのいい奴なのだが…
怒鳴られた事で気を悪くした俺は自分の席に戻る。
「何があったか知らないけど俺にあたるなよ」
呟くとバッグから漫画を取り出し読書にせいを出すことにした。
その日沙紀の機嫌は結局直らず、面白くない気分のまま帰宅した。
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