あの日

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その日は珍しくまっすぐ家に帰った。台所からカレーの匂いがしてきて悪かった気分も少し解消された。カレーは大好物なのだ。 「帰ってきたら、ただいまくらい言ったらどうなの!」 ここでも怒鳴られた。ムッとしたが仕方なくただいまと言った。 「なんか母ちゃんも機嫌悪いな」 「いいから手でも洗ってきなさい」 「もしかして母ちゃんもあの日か?」 そう言うと、すごい勢いで振り返った。顔が怒りで真っ赤だった。 「くだらない事言ってないで宿題でもやってきなさい!」 「てかさあの日ってなんの日なの?今日なんかの記念日かなんか?」 「あの日はあの日でしょ!辞書でもなんでも調べなさい!」 どうした事か。全く分からん。ひいきの野球チームが惨敗でもしたのだろうか。 気分により味覚も変わるらしくカレーもいつもより味気なく感じた。会話のない食事を早めに切り上げると部屋に引き上げた。 「なんだか今日は面白くねーな」 部屋に戻り、さっそく辞書で「あの日」を探してみる。…が見つからない。くそ!母ちゃんの嘘つき! だがなんとなくだが、俺にも予想がついた。「あの日」というのはどうしようもなく、虫のいどころが悪い日の事を言うのだろう。 いつも寝る時間になっても沙紀や母ちゃんの不機嫌な顔が思いだされてなかなか寝付けなかった。これは明日は遅刻だな。
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