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アイツは屋上が好きだった。
俺は貴子の背中にガウンをかけた。
「風邪ひくぞ」
貴子は俺を見た。
「身体…あんまり冷やすな…」
貴子は小さく頷いた。 「きーちゃん…」
遠いところをみながら貴子が呟いた。
「ん?」
「天使って信じる?」 「…えっ…?」
俺は貴子をみる。
「…信じる?」
俺は息をひとつついてから答えた。
「信じない」
貴子もひとつ息をついた。
「きーちゃんは天使じゃないのね」
「貴子は天使なのか?」 ふたりで顔を見合わせて笑った。
「…よく言うじゃない。白衣の天使って…」
「それは看護婦だろ…」 「きーちゃんは天使じゃないの?」
「天使じゃねぇよ」 「じゃあ、なんなの?」 「知らねぇよ」
「私、冬の花火が好きなの」
「ふーん」
「さみしいから…。夜の星みたいじゃない…」
「そうか?」
「夏にやる花火って『きれいだね』って素直に言えるけど、それだけじゃない。冬の花火に言葉はいらない」俺は貴子をみつめた。 そして俺は、貴子の背中に羽をみた…
…とべない天使…
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