木下(きのした)編

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次の日貴子は風邪をひいた。ついでに俺も風邪をひいた。 「馬鹿」 貴子があきれた顔をして言う。 「馬鹿は風邪ひかないの」俺は貴子をにらむ。 「…きーちゃん」 「ん?」 俺は心配になって貴子の顔をのぞきこんだ。 ―――「…私…天使になりたいよ…」 「貴子…」 「真実(ほんとう)に天使がいるんだったら私たちの病気も治ってると思う。だから私は天使になりたい」 「…うん」 俺は頷くことしか出来なかった。 貴子の腎臓は殆んどこわれている。 助かるためには健康な腎臓をもらわなくてはならない。かなりの重体で、外出は禁止されている。 だけど貴子は、かまわず外へ行く。 俺はついつい怒れないでいる。 「怒られた?」 「あぁ」 「ごめん」 貴子がそう言ってそっぽを向いた。 「え…?」 「だから、ごめん。何度も言わせないでよ!」 「…あぁ」 貴子は苦しそうに俺をみた。「大丈夫か?」 「眠って良い?」 小さい声で貴子が言う。 「あぁ……ごめん。おやすみ」俺は布団をかけなおして貴子の病室をあとにした。
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