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「おはよう。今日は貴子の嫌いな検査の日ー。しかも血液検査だってさー。ついでに紙コップ2杯~」
「なんなのよ、あんた!からかいにきたの!?」 まだ少し鼻声で貴子が怒鳴る。
「そうだよ。―――心配だからさ…」
俺はうつむく。
「なんでよ!」
「昨日、具合い悪そうだったから!」
「大丈夫よ…別に…」 ふくれ面のままそっぽを向く。
「良い結果だと良いな」 俺は呟いて振り返った。 (ほんとうは、これを言いにきたんだ…)
「きーちゃん…」 うしろで貴子が呟いたけど、俺はそのまま病室をあとにした―――
俺は屋上から夜の町をみていた。
「きーちゃん」
貴子が呼んだけど俺は振り返ってやらなかった。 「怒ってる?」 「風邪、治ってないんだろ」俺は振り返って言った。 それから貴子の横を通って、屋上からでた。
大学に戻ろうとしたけど貴子のことが心配で病室に寄った。
貴子は眠っていた。
俺はそっと布団をかけ直した。
「早くよくなると良いな…」呟いて病室をでた。 俺は、途方に暮れるほどせつなかった。
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