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ー(3)ー
もうすぐ内科実習が終わる。俺にとって内科は、いちばん苦しかった。
「きーちゃん」 貴子が小さく呟く。 「ん…?」
「きれいだね…」 俺は答えなかった。 かすみがかった夜だった。 俺はただ、切ない冬の花火をみていた。 「きーちゃん」 貴子は俺に花火をさしだした。俺が貴子をみると、貴子はそっと頷いた。 …生命(いのち)がまたたくみたいに… 「きーちゃん…」 …生命(いのち)がまたたくみたいに… 「きーちゃんは天使じゃなくて…」
ひとつの夜になっていくみたいに…
「サンタさんみたいだね…」 貴子はそっと笑う。 「え…?」 「クリスマスに笑顔をつれてきた」
…「貴子…」
「ありがとね」 …俺は貴子をだきしめた。 「きーちゃん…」 「ずっと好きだった…」 「…きーちゃん…。ありがとう」
…貴子の背中に白い天使の羽…
空からフワフワ舞いおりて雪がふたりをつつんでいく… 「貴子は天使だね」 「え…?」
「僕たちに雪をつれてきた」「天使になれた…?」 「あぁ…」
俺は笑った。
貴子もそっと笑った。 やさしい雪がふるなかふたりはくちづけを交した… END
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