Anda Tararna (アンダトゥーラナ)

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「これで終わりだ。ヤヴュル、お前をここでdelete (削除)する」  ラーシュはいっそうの力をこめて、剣の柄をにぎり直した。  小さな金属音は黒い闇石の壁に冷たく反射して増幅を繰り返すと、はるか頭上に広がる深い天井へと吸いこまれていった。  よどんだ空気に、静かな沈黙が流れる。  一息つき、ラーシュは静かに剣を振り上げる。  次の瞬間、稲妻のような強烈な閃光が爆音と共に部屋全体を駆け抜けた。  光を吸いとる闇石の吸光量は限界を突破し、ぶ厚い石の壁は一瞬で砂のようにさらさらと砕け散った。  外の光を遮るものがなくなり、砂ぼこりがたちこめた部屋の中が一気に明るくなる。 「周辺に飛び散ったバグの破片が残っているわ。ラーシュ、気をつけて!」  ラーシュの後ろに控えていたイェシカは低く身構え、ぴんと長い耳を立てた。  イェシカの細く長い髪は、バグ探知を示す虹色に波打ったままである。  ラーシュはイェシカからの警告を受け、周囲に神経を集中させる。    それから一分と経たないうちに、ラーシュの耳は小さなノイズを聞きとった。  音の発生と同時に、ぴんと耳を立てたイェシカの背後の空間がレンズ状にゆがみ始める。  中からはモザイク様の細かい四角の塊が出現し、ちらちらと点滅しながらイェシカの上に今にも降りかかろうとしていた。  ラーシュはバグの出現からわずか数秒で、イェシカとバグの間に自分の体を滑りこませる。  そして再び腕を大きく振り上げ、青白く輝く大剣をバグめがけて一気に振り下ろした……
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