Anda Tararna (アンダトゥーラナ)

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***************  ぎらぎらとした太陽の光で、あちこちに陽炎をたぎらせる砂漠。  その中に突如、天へ向け黒々と立ちあがる、一つの大きな渦が現れる。  竜巻のようなその渦は、全てバグの塊からなっていた。  周辺の空間は不気味に歪み、渦の通過した経路には氷山がめきめきと生えて壁を形成していく。  氷山の縁はバグが細かに点滅して波打ち、刻一刻と形を変化させる。  砂漠には明らかに存在するはずのない氷山が次々と生まれる、異様な光景だ。  ラーシュとイェシカは、バグの渦からほんの数歩離れた場所まで近づき、戦闘状態に入った。  ラーシュの大剣が、渦を横から切り裂く。が、すぐに切り口が融合して元に戻ってしまった。  何度も斬りつけるが、渦には傷ひとつつけられなかった。 「馬鹿な……この剣が、刃こぼれするはずがないのに!」  ラーシュは自分の剣の刃をみて、思わず叫ぶ。  対バグ専用デバッカ加工を施した、特殊な大剣。  その刃が、バグに蝕まれてパラパラとモザイク様の破片を落としていた。バグを破壊するスクリプトが剥げた状態では、もはやヤヴュルに太刀打ちできない。  渦に、不気味な虹色の光が走る。  やがて、渦の中からぬるりとした長い触手が出現した。  触手は目にも止まらぬ早さでのびると、ラーシュの手から剣をたたき落としてしまった。 「バグが攻撃しただと? そんな……あり得ない!」  急いで後退する、ラーシュとイェシカ。  するとまるで二人を追うように、渦からいくつもの触手が生えてきた。  触手は、次々とラーシュに向かって攻撃をしかけてくる。  ラーシュとイェシカは攻撃をよけながら、触手の攻撃が届かない場所までなんとか走って身を隠した。 「ああ……まさか、こんなに早く完成するなんて……」  イェシカが荒い息のまま、急に声をあげた。 「どういうことだ? イェシカ、君はなにか知っているのか?」  ラーシュは竜巻に意識を集中しながら、隣にいるイェシカに問う。 「本当は、今回の狩りが終わってから打ち明けるつもりだった……こうなることがわかっていたら、もっと早く言うべきだったわ」  暗い表情でうつむくイェシカの次の言葉を、ラーシュは黙って待った。
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