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ただぼんやりと恵美といた数時間のことを考えながら歩いていると、辿り着いた先は自分が入院している病院だった。
俺は無意識のうちに病院に舞い戻っていたのだ。
病院の中はバタバタと慌ただしく緊迫した空気が漂っていた。
何かあったのだろうか、などとのんきに思っていると、一人の看護師が俺に気付くとものすごい勢いで駆け寄ってきた。
「幸人君っ!」
その形相に、この騒動は自分が蒔いたものだと事態を飲み込んだ。
看護師は俺の直ぐ傍まで来ると肩や腕などさわり、どこにいってたの、大丈夫?どこか苦しいところはない?などと俺に確認した後、病室に連れて行き、春日先生を呼んでくるから待っててねと言い残し病室を後にした。
春日先生とは俺の主治医で確か今日は休みだったはずだ
どうやら俺が抜け出したせいで休日出勤させられたようだ。
ただでさえ担当患者が急変などしたら、休みなど関係なく呼び出されるのに、俺の自分勝手な行動で貴重な休みを潰してしまったのかと思うと申し訳ない気持ちになった。
そんな思いに駆られていると、ガラガラ、バン、と勢いよく扉が開いた。
その音にびくっと体がはね、呼びに行ったにしては早かったので病室の近くにいたのだろうか、と思いながら振り返るとそこには肩を震わせ口を手で覆い眼に涙をいっぱいに溜めた母の姿があった。
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