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「あのね、俺だってたまには早起きくらいすんだよ」
今は6月だ。雪なんて降るわけがない。
いくら珍しいからと言ってたかが出勤時間が被っただけでそんなに驚くことかと不服に思いながら失敬なやつだといわんばかりに言ってやった。
そんなやり取りをしていると、今度は後ろから俺たちの間を割って誰かが肩を組んできた。
こんなことをしてくるのは同期の川田位だろうと思い横を見ると、案の定川田の顔が横にあった。
「おっはよーさん。水野は相変わらず美人だねぇ~。
誰かと思ったら青木じゃないか!どしたの?お前。こんな時間に。腹でも壊したか?」
先に水野に声をかけると、次に俺の方に振り向き目を見開き大袈裟におどけてみせた。
「……。」
(相手がはっきりしないのにいきなり肩を組んでくるのか?
もし俺上司だったらどーするつもりだたわけ?
しかも腹壊したって、普通それなら逆に遅いだろ!?
おまえこそその頭の中どうしたの?)
などと心の中で毒づきながら、ちょっとふてくされた気持ちになっていると、
「いやーん、可愛いネックレス。何~?少女趣味でもあるわけぇ?」
と、水野が冗談交じりに言ってきた。
「ああ、これはー…」
俺は首元に手を当てると、いつも身に着けているネックレスが襟元から出てきているのに気付かなかった。
ハートのモチーフのカギの形をしたヘッドのネックレスだった。
確かに明らかに女性ものであるそれを、恥ずかしがることもなく手で包みあることを思い返していた。
そう、これは彼女からもらったもの。
夢に出てきた笑顔の彼女からー……
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