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「あなたは好き?」
「え?ああ、うん。」
俺はまたしても彼女の笑顔に魅せられて、一瞬なんのことをきかれているのかわからずに聞き返したが、直ぐに海のことがと思い、続けて答えた。
それからぽつぽつと、何でもないようなお互いの話を質問し合った。
彼女の名前は恵美。
歳は俺と同じ16歳で、今日は親戚の結婚式の帰りなんだそうだ。
帰り際海が見えたため浜辺まで降りていき、ちょうど海を眺めているところに俺が通り掛かったようだった。
「へえ、だから海でそんな服なんだ。」
「ふふ、そうなの。でもこれおねえちゃんから借りてるから、汚しちゃったら大変。」
その言葉の割に特に焦った様子もなく、ただ楽しそうに笑っていた。
恵美が笑ってくれていたからだろうか。
ここに来るまではあんなに真っ暗な心にやさしい光が灯されたかのように、恵美と話していると自然と自分が笑っていることに気付いた。
とても穏やかで、そしてどこか不思議な感覚だった。
どうして、今日会ったばかりの何も知らない恵美にこんなに心穏やかな気持ちになるのか。
(いや、何も知らないからなのかも。)
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