月が綺麗

1

「ありがとうございました。お気をつけて」

人懐っこい笑みを顔に張り付かせ、紗綾はペコリとお辞儀した。

銀行員になって早5年。

接客も、電話応対も、上司のご機嫌とりも難なくこなせる。

…でも心のモヤモヤは年を重ねるごとに増えていく。

「美月さん、三番に外交の佐々木さんからお電話です」

今年入行したばかりの女の子が緊張した面持ちで受話器を握っている。

「はい、ありがとう」

ふと、店の中を見渡せば、私より年下の女の子達がパタパタと忙しそうに働いている。

いつしか5年目の自分は上から数えた方が早いグループになってしまった。