ありふれた毎日、幸せな日々

3/8
前へ
/18ページ
次へ
「いってきまーす」 武人ー米崎武人は朝食を済ませ、やや重い足取りで玄関へ向かう。そして、お気に入りのスニーカーを下駄箱から取り出した。 「いってらっしゃーい。気を付けてね。武ちゃん」 武人の背後から女性の声がした。振り向くと、そこには中年の女性がリビングのキッチンからニコッと笑った顔を覗かせていた。 「あいよー 」 気の抜けた軽い返事をして、武人はまだ踵の入ってない足をパタパタと地面に打ち付けながら家を出ていった。 玄関を出てから、青く澄んだ空を突き上げるように両手を上へと伸ばし、大きく背伸びをした。 これは彼の毎日の日課だ。1日を気持ちよく過ごすために、家の前で伸びをして大きく深呼吸をする。そして、庭から見える富士山を眺める。まるで老人のような1日の始め方だが、彼なりの考えがあるのだろう。 「うーん!今日も晴天!体調万全!見送ってくれる家族がいる!可愛い彼女もいる!俺は幸せモンだ!」 そう言うと、快晴の青空に負けないくらいの笑顔を浮かべながら自転車に乗り出し、学校へ向けてペダルをギコ、ギコと漕ぎ始めた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加