プロローグ

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「高比良君」  生徒会室の椅子にもたれながらパソコンをしている藤澤真央が俺を呼んだ。  彼女のマウスが振り子のように弧を描く度、ピコンと鳴る効果音が非情に腹立たしい。 「このソリティア……飽きちゃったよ」  ゲームに飽きれば仕事をすればいいじゃない、とマリー・アントワネットよろしく机を叩いて叫びたい気持ちを抑える。  生徒会長の不始末は、副会長である俺の責任だ。  俺には彼女を真っ当な人間に更生させる義務がある。  などと、一年前までは思い込んでいた。  だが、それなりに気が長い俺にも限界というものは訪れるらしい。  気がつくと無意識のうちに真央の両肩をがっちりと掴む俺がいた。  これが好意を寄せている相手に対する行動なのか、我が行動ながらに驚きを覚えるが、四の五の言えぬ状況だということも事実だ。  罪悪感に対する言い訳を心中で吐露し続ける。  そんな俺に対し真央は微笑みながら。 「ここまで思考回路が手に取れると、多少の暴力も可愛く思えるね」 「ええいやかましい! そもそも、これはお前が職務怠慢であるが故の行動であってだな……」  我ながら説教くさいと思う。  だが、あえて脳内で言おう。悪いのは真央であると。
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