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拠り所
期待は罪である。
そう考えるようになったのは、ごく最近の事だ。
小鳥遊美春という人物と出会い、俺は彼女と自分を傷付けた。にも拘わらず彼女は、前を向いた。
『夢を見たっていいじゃないですか』
堂々と主張されたその言葉を、俺も椎名さん同様、信じてみようと思ったりもした。
だけど俺は、気付いたんだ。
今まで散々嘘を吐いて、本音を隠してきた俺は、自分自身の本音をどこに隠したのか、忘れてしまっているという事に。
俺には、嘘しか残っていなかった。結局俺という人間は、徹頭徹尾嘘しか無かったのだと。
でも、それで十分だった。
嘘さえあれば、俺は独りにならなくて済むから。
人は何かを拠り所にしなければ生きれないと誰かが言っていたけど、その通りだと、俺も思う。
そして、嘘が俺の拠り所だ。
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