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「………」
圭くんの雑誌を捲る音だけがペラっ、て。
そんななかおれは相変わらずゲームで。
いや、すごく大事な。
今までの努力はここで報われるんだよ、ってくらいのほんと言うたらラスボス面で。
『よし、倒したるぜ!!』
なんて数分前。
意気込んでゲームを立ち上げた俺に
『ほい、頑張れ頑張れ(笑)』
なんて呆れながらも笑ってくれた圭くんは俺の隣に座ってニコニコしながら雑誌を読み始めた。
そう、それが数分前。
それがなんだ。
ついさっきまでは本当に集中して。
目の前の強敵に闘志を燃やしていたんだ。
それなのに。
『たまには甘えてみたら?』
なにがどうなってそうなったのかは知らない。
突然頭の中にふっ、と響いたその声は、
「イチャイチャ、とか。デレデレ、とか絶対人前でしねーよな」
なんて突然言い始め
『たまには甘えてみればいいじゃん。柴圭も喜ぶよ』
そんなおっさんの一言で。
甘え…?おれが?
圭くんに甘える…とか。
そういえばしたことねぇな…って。
おっさんに言われたときには軽く流したその発言が、今になって響く。
『柴圭も喜ぶよ』
圭くんが喜ぶ…?
いやいや、やっぱり恥ずかしいだろ、キャラじゃねーし。
「どした?」
ゲームの手が止まってる俺を
圭くんはおっきな目で隣から顔を覗き込んできて。
「いいや??なんでも?」
なんて俺らしくない。
わざとらしい返事をして、手元の主人公を歩かせる。
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