* 冷たい上司

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岡本さんと広田さんは同い年で26歳。 同期らしいが、ひっつめ髪で意地悪そうな眼鏡をかけた岡本さんの方がずっと年上に見える。 「新人だからって甘えてばっかり」と、きよらに言うのが岡本さんの口癖。 …そんなつもりないのにな…。 きよらは岡本さんのそのセリフを聞く度に、心の中でため息をついた。 長野行きの前日、きよらは長野で行う会議の資料作りの為、岡本さんと残業していた。 今回のクライアントは大口の取引になりそうで、長野工場での工程見学と会議が相当重要になる。 そもそも、水野主任と広田さんが2人がかりで取りかかる案件自体が異例だ。 いかに会社が今回に期待しているかが伺える。 ミスは絶対に許されない。 きよらは、自分の担当した分の資料を何度も何度もチェックした。 …うん、大丈夫…。 岡本さんが作成した分と合わせて完成になるので、岡本さんのパソコンにデータをを送って最終確認を頼んだ。 「岡本さん、私の分の資料できたのでチェックしておいてもらえますか?」 きよらが声をかけても、岡本さんは黙って自分のパソコンに目を落としたままだ。
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