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…また…。
絶対聞こえてるはずなのにな…。
岡本さんは自分が忙しかったり早く帰りたかったりすると、こんな態度に出る傾向にある。
…チェックしてもらえないと帰れないじゃん…。
出張に行くのは皆一緒だし、明日は早いからきよらだって早く帰りたい。
きよらは小さく息をついて、休憩コーナーに向かった。
温かいミルクティーを買って、窓際のテーブルに肘をつく。
窓際のテーブルは立ったまま使うタイプで、きよらの丁度胸の高さだ。
ちゃんと座って休めるテーブル席もあるが、窓の外の景色を眺めながらお茶が飲めるこの場所が好きだった。
何気なく時計に目をやると、午後8時過ぎ。
…これを飲んで戻ったら、岡本さんの資料も完成してるかな…。
ふと隣に人の気配を感じて、見ると広田さんだった。
コーヒーを持ってる。
広田さんの香水もふわりと香った。
「まだ帰れないの?」
広田さんがきよらを見下ろしながら言う。
背の高い広田さんがこのテーブルに肘をつくと、若干前屈みになる。
フレームの細い眼鏡の奥の瞳が優しい。
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