* 冷たい上司

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…そんなにずっと眉間にシワ寄せてると、取れなくなりますよ…。 きよらは心の中で思いながら、「すぐに確認します」と言って席に戻ろうとした。 水野主任の声が背中越しに聞こえる。 「あ、藤井も連れてくからねー。長野。」 …えぇ!?なんで私が…!? 勢いよく振り返ったきよらを見て、水野主任は涼しい顔で続ける。 「長野はりんご美味しいからね。」 …知ってるし!! そんなコト!! …ていうか、ソコまでりんご好きじゃないしね!! …しかもソレ、私を連れてく理由になってないじゃん…。 「……。」 無言で引きつった笑みを浮かべるきよらを、周りの社員が失笑している。 むーっと下唇を突き出しながら席に戻り、長野工場に電話しようと受話器を取る。 「あ、ちなみに長野工場には俺から言っといたから。」 ……。 …ですよね…。 隣の席の 佐藤 遥(さとう はるか)が、たまらず吹き出した。 「また主任とやってるね。」 書類で口元を押さえて、クックックッと肩を震わせている。 「…遥…。」 きよらは席に着いてため息交じりに苦笑したが、本当は分かってる。 水野主任はそういう礼儀を大切にする人で、自社だろうが他社だろうが、前もってのアポイントメントを必ず早めに行っている。
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