第一章

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「!!」  首筋がチリチリする感覚に、ライルは思わず身を屈めた。直後、斬撃が横切る。ライルが今の今までいた場所に銀の軌跡を刻んだ。 (……危ねえ!)  恐怖に背中を粟立てながら、ライルは刀を持ち変えた。柄を前にし、屈んだ状態から前方へ飛び込む。  大胆にも飛び込み前転だ。素早く起き上がり様、右膝を立て左膝を石畳につけた。  片膝立ちの無防備な背中へ、クレハは空振りした勢いで向き直った。即座に石畳を蹴る。遠心力が突進力に変換。弾丸のように、飛び出して来た! (──来る!)  背後から迫る気配に、かっと目を見開きながら、 「しっ!」  ライルは鋭く呼気を吐いた。左足の靴裏で石畳を蹴る。左膝が伸びた。その発条で腰を大きく捻りながら、振り向き様、逆袈裟に斬り上げる!  振り向き様のカウンターがクレハに襲いかかった。反発し合う磁石のように、クレハは踏み込んだ反動で後方へ跳び退く。  ライルは斬り上げる勢いで、立ち上がりながら、 (逃すか!)  ここぞとばかりに、空振りの勢いを加速させた。遠心力が上乗せされ、再びくるりと背中を見せる。  高速回転の勢いを跳躍力に変換し、空中へ踊り上がりながら、 「うおおぉぉおお……!」  ライルは吼えた。急降下しながら、右肩から左腰目掛けて刃を斜めに振り下ろす!  ──波天流打ノ型十一式〈揚刃蝶(アゲハチョウ)〉。  Xを描くように、逆袈裟斬りの勢いで回転し、飛び上がりながら逆方向から高速飛翔袈裟斬りを放つ型だ。  対するクレハは左足を前に大きく腰を捻りながら、着地すると、 「いやああぁぁぁぁっ!」  輪唱するように、独特の甲高い気合いを上げた。  一旦下がったのは誘いか。間髪入れず着地の反動で勢いをつけ、引いた右足を蹴る。重心が移った左足を軸足として、蹴り足の突進力を腰の捻転に乗せた。肩から腕の腕力を加え、右刀を右から左へ水平に薙ぐ!  空中で銀の軌跡を描きながら、二刀の軌道が一瞬で重なり──
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