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その廃屋は、不思議な館だった。
一つ扉を開ければ、すぐに同じような扉に辿り着く。また扉を開ければまたもや同じような扉に辿り着く。
そしてもう奥と言える場所まで辿り着くだろうと思える程歩いたというのに、同じ部屋が繰り返し続くだけ。
「なんだ?ここ…。肝試しには来た事あるけど、こんな場所じゃなかったよな…?」
シオンはエリカに尋ねる。
「うん…」
「疲れた?」
「ちょっと…」
「残る?」
「ううん、恐いから行く」
そんなやり取りをしている時。
「!」
シオンは背後に強烈な殺気を感じて振り返った。
すると、うっすらと開いた扉の奥に、誰かがいた。
その誰かはシオンに見られた事に気付くとさっと扉の向こうにかけて行った。
「おい、待て!」
一目散に逃げた誰かをシオンは追う。
バタン!
シオンが先程誰かが逃げていった扉を通り抜けると、すぐに背後の扉が閉まる。
「ちょっと、シオン!なに!?」
ドンドン、ドンドンッ!と背後で閉まった扉をエリカが叩く音がする。
「エリカ!?どうした?」
今しがた通った扉のノブを掴んで開けようとするが、何故か扉は開かない。まるで一瞬のうちに誰かが施錠したかのように。
「開かないよ?」
扉と格闘していたシオンの後ろで、誰かが、そう言った。
何故か、聞き覚えがあると思ったその声に振り返るとそこには――。
――自分が、いた。
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