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全身が悲鳴をあげ、脳髄に激痛を知らせる。
激しい痛みと、噎せ反るように酷く濃密な血の臭いの中で、少年は目覚めた。
彼が横たわる酷く冷たい石の床にも血は広がっていた。
いっそ、目の届く限り血溜まりが続いているのではないかと錯覚する程夥しい血の量。
彼はほとんど血の海と言える場所で目覚めた。
身体中を軋ませる痛みの中で、意識を失う前の出来事がよぎる。
ハハッ
アハハッ
アッハハハハハハハハハハハハハハッ!
可笑しくて、愉快で堪らないといった様子で笑う笑い声が頭から離れない。
「畜生……」
血が出そうになる程自分の拳を固く握って少年は呟く。
悔しさに、不甲斐なさに、怒りに張り裂けそうになりながら。
ガッ!
握り締めた拳を床に叩き付ける。
「畜生、ちくしょう…っ!」
自分の無力さに。非力さに。
そして、何一つ救えなかったという事実に。
何度も何度も。
血が出て、衝撃に骨が軋んでも構わずに、少年は遣りきれない思いを拳に込め、固く冷たい石の床を殴り続けた。
××
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