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年齢は30歳前後、身の丈が190㎝を越える長身の男、件のシェリーは薄暗い部屋の中で、自分の思い出を振り返った。
――それに、俺の見た目は普通の奴等にゃ奇怪すぎる。
ちらと、薄暗い部屋の窓におぼろげに映る自分の姿を確認して自嘲気味にシェリーは思う。
目に痛い程の白髪が腰まで伸びた男がそこに映っている。
白い長髪は右目を隠し、見えている方の左目は濁った鉛色、真っ黒なノイズのかかった曇天のような色をしている。
身体を覆うようにワインレッドのロングコートで身を包んだその姿は、ある意味では『殺し屋』然としていた。
『魔眼のシェリー』の通り名に由来する『魔眼』は、隠れた右目であり、普段は分からないように眼帯で隠していた。
その姿を見ながら、俺もとうとう人間じゃなくなってやがらぁ。と嘲る様に窓に映る自分に言う。
シェリーの髪の色も目の色も、元々は白でもなければ鉛色でもなかった。
本当の色は忘れたが、人間の色をしていた気がする。
――どうせ死ぬんだ、見た目なんかどうだっていいか――。
心底どうでも良さそうにシェリーは思う。
『人間が身体の一部でも、人外を取り入れるなど可能な事じゃない。その眼は使えば使う程に命を削るぞ。使いすぎれば――』
――使いすぎれば、使い切ったら、死ぬ。
――その証拠に、髪は白髪になり、眼の色も普通じゃねぇ。人間の部分が薄くなっていってるってのは、分かる。
――でもどの道、どうだっていい事だ。 俺は、死ぬ為にこの力を使ってんだから――。
パチリ
不意に、そんな能天気な音が聞こえた。
驚いて音の方を見れば――。
視界が白に染まりあがった。
××
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