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――真っ白い視界。
――いや、これは眩しすぎて見えねぇだけだ。
そう気付いてシェリーは目を細めて辺りを確認しようとする。
きゅ。
前の見えないシェリーの腕を何かが掴んだ。
その小ささに、それが誰だか分かったシェリーは、呆れたような声を出す。
「だから、俺は明るいのが苦手だって言ってんだろうが…」
「でも暗すぎだよ?寝てるかと思った。もうすぐ時間なのに」
シェリーの腕を掴むユーリは、もうすぐ時間のステージに緊張している素振りは全くなく、ただちゃんとシェリーが来てくれるかが心配で見に来たらしい。
だんだんと見えるようになってきた視界にユーリを認めながら、自分を見上げる少女の頭にぽん、と手をやる。
それがさも嬉しいというように、ユーリはにっこりと笑った。
「もう衣装着てるんだよ♪」
「ああ、でもひっついてちゃ見えねぇよ」
「あ、そっか♪」
ユーリは離れると、両手を広げてくるりと回る。
着ている真っ白な短い丈のワンピースの衣装がふんわりと広がって揺らめいた。
「白いな」
「それだけー?」
「ん?それだけだ」
淡白すぎるほど淡白な感想にむくれながらも、パッと部屋の時計を見て時間がないことに気付いたユーリはわっ、と声を上げた。
「あーもう時間ないっ!じゃあシェリー、わたし頑張ってくるね!絶対!初めから!!見ててよね!」
それだけ言ってユーリはまたふわりと裾を翻らせると部屋を出て行った。
その背中を見送りながら、シェリーはああ、とぶっきらぼうに返事をした。
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