黒の物語【1】

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 ――真っ白い視界。  ――いや、これは眩しすぎて見えねぇだけだ。  そう気付いてシェリーは目を細めて辺りを確認しようとする。    きゅ。    前の見えないシェリーの腕を何かが掴んだ。  その小ささに、それが誰だか分かったシェリーは、呆れたような声を出す。 「だから、俺は明るいのが苦手だって言ってんだろうが…」 「でも暗すぎだよ?寝てるかと思った。もうすぐ時間なのに」  シェリーの腕を掴むユーリは、もうすぐ時間のステージに緊張している素振りは全くなく、ただちゃんとシェリーが来てくれるかが心配で見に来たらしい。  だんだんと見えるようになってきた視界にユーリを認めながら、自分を見上げる少女の頭にぽん、と手をやる。  それがさも嬉しいというように、ユーリはにっこりと笑った。 「もう衣装着てるんだよ♪」 「ああ、でもひっついてちゃ見えねぇよ」 「あ、そっか♪」  ユーリは離れると、両手を広げてくるりと回る。  着ている真っ白な短い丈のワンピースの衣装がふんわりと広がって揺らめいた。 「白いな」 「それだけー?」 「ん?それだけだ」  淡白すぎるほど淡白な感想にむくれながらも、パッと部屋の時計を見て時間がないことに気付いたユーリはわっ、と声を上げた。 「あーもう時間ないっ!じゃあシェリー、わたし頑張ってくるね!絶対!初めから!!見ててよね!」  それだけ言ってユーリはまたふわりと裾を翻らせると部屋を出て行った。  その背中を見送りながら、シェリーはああ、とぶっきらぼうに返事をした。
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