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きらびやかな空間に、アップテンポの電子音楽が流れている。
白、赤、青、緑の色とりどりのライトの中心には真っ白な衣装を身に纏った小さな少女がいて、その少女が正しく天使を思わせる高く細い美しい声で歌っている。
ステージの眩しさか、その少女の眩しさか、どちらとも付かぬその光に目を細め、魔眼の男はステージに目をやる。
――魔法ってのは本当に便利だな。こんなだだっ広い空間でも声が行き渡るんだから。
関係者だけが入れる席はステージ脇の二階席で、眼下に何万人もの人が見える。
その人数の多さに嫌な気分になりながらも、シェリーはそこに危険分子がいないかどうか注意深く見据えた。
――何か、おかしい。
シェリーがそれに気付いたのは舞台が中盤に差し掛かった頃だった。
――こういう場所に来た事はねぇが、さっきっから人の動きがおかしい。
――嫌に、統制が取れてやがる。
――だが…にしては人数がおかしい。多すぎる。
目をつけた人間が10…20……
数えながら、シェリーは自分の目を疑った。
――まさか、これだけの人数を割いてあのガキを攫うか殺すかしにくるわけが…
シェリーが思案したその時、おかしい、と思っていたその大人数の人間が一斉に動き出した。
「まさかっ!?」
言いながら、一瞬ステージへ向かう階段を見据えたが、時間がかかりすぎる。
そう瞬時に判断したシェリーは、二階から何万人もの人間が蠢く客席へと、真っ逆さまに飛び降りた。
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