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練習試合に美術部が同行して写真を撮らせて欲しいだとか、元クラスメートがどうだとか話していた2人だったが、人もまばらになった視聴覚室に「そろそろ閉めるぞ」という先生の声が響き、出口に身体を向けた。 「話し込んじゃってごめんね」 出口に向かいながら、申し訳なさそうにはにかむ香坂君が私の横を並んで歩く。 さり気なく人に道を譲ったり、こうして一緒に歩きながらも気を使ってくれる彼を素直に凄いなと思う。 はっきり言って中学生らしくない。 なんでこんなに大人っぽいんだろう。 香坂君は1年の頃から、周りの男子とは違う落ち着いた雰囲気を醸し出していた。 「大人しい」ではなく「大人っぽい」 そういえば、男子の中でも香坂君だけは最初から大丈夫だったな。 そんな事を思いながら教室を出ると、「じゃあまた」と軽く手元のファイルを掲げて香坂君は帰って行った。 視聴覚室は新校舎の渡り廊下に近い端にあり、出口を出ると私達は左右に別れる。 香坂君がいた事により流れていた穏やかな空気は、急に守谷君と2人きりになり少し緊張したものに変わった。
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