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「前から順番に箱を回します。中から一枚引いて次の人に回して下さいー」
制服も大分着崩すようになった14歳の春。
中学3年最初のHRは席替えのようだ。
担任の小野は黒板に向かって、席を表した升目にランダムに数字を書き続けている。
一番前だけは免れたい‥‥
いや、二番目も三番目もヤダなー
今の席は出席番号順。
「菊池清花」
私は運よく後ろから二番目だ。
後ろの席の工藤恵里佳が「あーぁ‥‥」とぼやく声が聞こえる。
「小野の奴最悪!」
私が振り向くと、恵里佳は眉間にシワを寄せて頬杖をついた。
「本当だよね~?
普通席替えってクラスに馴染んできたりしたらやるんじゃないの?」
苦笑しながら答えると恵里佳は鼻息も荒く「そうそう!」と言って黒板を睨んだ。
「うちらの天国も一瞬だったなー。こんな事なら最初から期待させないでほしいよ‥‥」
「だよね~?
また恵里佳と一瞬だし、今度は席まで近いし最高だと思ってたのにな。」
私と恵里佳は1年の頃から同じクラス。
明るくてサバサバした性格の恵里佳は、入学したての頃、引っ込み思案で人見知りだった私を引っ張り回してクラスに馴染むのを手伝ってくれた。
お陰で今は人見知りもあまりしないし、男女問わずに仲がいい。
「そうだよ。二年の時は真希が間にいて私一番前だったし?
あん時席替えしてくれりゃあ良かったのに!」
恵里佳が文句を言うのももっともで、二年の時の担任は座席表を作り替えるのが面倒だとか何とかで、二学期の半ばまで席替えをしなかった。
私と恵里佳の間には、その頃「木村真希」という大人しい女の子がいて、一列の定員から外れた恵里佳は、次の列の一番前の席になり、
「真希のほうが頭良いし、先生うけもいいんだから変わってよ~」
と真希に無理難題を押し付けていた。
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