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あの日のことは、今でも鮮明に思い出すことが出来る。 私がまだ七つの頃だ。 琴を弾くのにも短歌を詠むのにも飽きてしまった私は縁側で縁側で一人、人形遊びをしていた。 それにも飽きていたが他にやりたいと思うことが思いつかないので半ば投げやり的に人形で時間を潰していただけだった。 我が白井家、宗家では成人を迎えていない女に外出を許していない。 雅で美しい女であれ。白井家、宗家の女の在り方、第一条。 誰が提案した戒律だか知らないけどつまらない規律を作る。 庭で遊ぶことすら下品だというのだから救いようのない馬鹿が作ったに決まっている。 おかげで私は毎日同じことを繰り返していた。 ちらりと庭園に目をやる。 広い庭には誰一人いない。土地の無駄遣いだ。 広大な草原なんて言わない。だがせめてこの庭を走り回ることくらいは許してもらいたい。 きっと気持ち良いだろう。 肩で風を切り、転んだりして、泥だらけになったらどんなに気が晴れるだろう。 でもそんなことは出来ない。お父様が許してくれるはずがない。 私はこうやって人形遊びでもしておとなしい可愛い娘でいなければならない。
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