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――――――
『こちらVIP市郊外〝切り裂きクラレッタ〟による――』
『〝クラレッタ〟は女子高生を――』
『スカートの裾をベルトで縛るという奇怪な――』
リモコンの赤いボタンを押し込む。
羽虫が舞うような音を発て、手にしたそれの正面に佇むブラウン管の電源が切れた。
(-_-)「…捕まらないか……」
四方八方と跳ねた黒髪を撫で下ろし、インスタントコーヒーを口に含んだ。
甘さが足りない。
子匙4杯分の砂糖を加え、再度黒い液体が入ったマグカップに口を付けた。
(-_-)「授業…めんどくさいな…」
甘苦い芳香を吐き出し、思考を巡らせるは、今年の夏休みのこと。
――巷で話題の奇妙な殺人鬼。
女子高生を鋭利な刃物で斬殺した後に、スカートの裾をベルトで締めるという奇怪な犯行を繰り返す通り魔。
通称〝切り裂きクラレッタ〟。
なんでも、独裁者の恋人から名を取ったらしい。
(-_-)「迷惑だ…」
そのクラレッタという殺人鬼が、僕の住むVIP市ラウンジ区で犯行を行っているものだから、大事な高校生活が滅茶苦茶だ。
今日で、1週間も休校になっている。
大して学校に愛着が無い僕からすれば、喜ばしいと言えば喜ばしい。
しかし、その分大切な夏休みが潰れるのであるから、プラスマイナス0――いや寧ろマイナスだ。
(-_-)「暇だ…」
呟き、パソコンを開く。
――閑暇な昼下がり。
1人きりの家の中。
キーボードの音が、滑稽な程に良く響いた…。
――ゴシックNo.99のようです
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