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姿がないときには『チロ』と呼べばいつの間にかでてきましたし、本人も『チロ』が自分の名前だと理解できていたみたいです。
喋れはしなかったものの、僕はそれで満足でした。
『チロ』は、この山の妖精でこの場所で生まれたのだと思っていました。
もしかしたら幽霊なのかなぁ?と思いもしましたが、同級生のコたちの言うような怖いものでもないので妖精なんだと信じて疑いませんでした。
子供ながらに自慢したい気持ちもありましたが、誰かに言ったら『チロ』がいなくなってしまいそうな気がして自分だけの秘密にしていました。
でも、そんな不思議で幸せな秘密も長くは続きませんでした。
少しずつではありますが、確実に『チロ』の光が弱くなりはじめました。
一緒にいる時間も、どんどん短くなり、呼んでも出てきてくれない日が増えてきました。
図書館の本で、大人になると妖精は見えなくなると書いてあったのを思い出し、本気で大人になりたくないと願ったりもしました。
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