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「大丈夫?寒くない?」
「ちょっと…だけ…」
「そっか、此れ着て良いよ、俺寒くないからさ」
にこりと微笑む兎ちゃん。
有難う、とお礼を言って、兎ちゃんから借りたパーカーを着る。
まだちょっと、肌寒い。
よいしょ、と呟いて、兎ちゃんは腰を降ろした。
胡座をかいた兎ちゃんが膝をぽんぽん叩いた。
「ね、相模くん。此処おいで。」
ちょっと動揺したけど、結局、膝に座らせてもらった。
後ろから回された腕、俺はぎゅっと手を握られた。兎ちゃんの手は暖かかった。
「顔見てると、話しづらいでしょ?大丈夫、俺ちゃんと聞いてるから、話してごらん。」
「っ…。」
思わず泣きそうになる。
ズルい、こんなの…こんなの…
「ズルいっ…」
「え?」
「ズルいよ、兎ちゃんはズルい。
俺なんか、カッコ良くないし、いいとこ無いし、頭も悪いしっ…性格だって!ホントはずっとずっと根暗で、優しくなんかなくて、笑うのなんて上手く笑えなくてっ…っからあ…だから、俺兎ちゃんに嘘ついてるっ…兎ちゃんに…嫌われるって…俺っ…思って…っ!兎ちゃんの事諦めようって…思ったのにい…!こんなに優しくしてぇっ…!!ズルいよお…ばかあっ…」
「バカは雅だよ、ばあか」
くすりと兎ちゃんが笑う。
「え…」
「俺は、雅が好きなんだよ。
勿論、笑った雅は大好き、花が咲くみたいにパって笑顔。でもね、それ以上に、こうやって俺に本音を言ってくれる雅が一番好き。」
「俺は宮みたいに、長く雅と居ないから、ちょっとでも雅に近づけた気がして、ほんとに嬉しいんだよ。綺麗なだけの芸能人としての雅じゃなくて、相模雅としての雅が見れて、すごく嬉しいんだ。」
「だからもっと、何でも話して?俺は貴方の恋人なんだから、体重ねるだけなんかじゃないの、俺はちゃんと雅と、心を通わせたいんだ。」
頭を優しく撫でて、落ち着いた口調で話す兎ちゃん。
俺なんか涙で顔ぐちゃぐちゃで、嗚咽漏らしちゃってて、いつの間にか抱き締められてたから
兎ちゃんの服汚しちゃって。
「解った?」
優しく振る兎ちゃんの声に
俺はただただ、必死に首を縦に振った。
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