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クレアは闘技場で剣を振るいながら、思考することを止めない。
――ミーナと戦えるのは願ったり叶ったりだ。あいつはムカつく女だが、実力的には五大貴族の名に恥じないからな。
……しかし、レイ。奴に勝つビジョンが全く浮かばない。
だが、泣き言ばかり考えてる程クレアは弱い人間ではなかった。
――まずは、グロムの試合を見てからだ。レイの戦い方なんざ今の俺には全く見当もつかないし。
そう。レイと戦うのはクレアだけでなくグロムもだった。
クレアがすぐにグロムへと対戦相手の報告をしに行った時に、グロムも楽しげな声でクレアにそれを報告したのだ。
「せっかく何だからよ!!Sランクらしいし胸借りるつもりでいくぜ!!」
グロムが言った言葉を思いだし、口角をあげるクレアだがその手は休まる事はない。
……そうだな、胸を借りるつもりでもいいだろう。だがそれ以上に、俺は勝ちに行くつもりだぜ!!
ひゅっ、と、クレアが剣を横に凪ぐ様に振ると、そこから衝撃波が闘技場の床を深くえぐり取った。
岩を削る様な音と共に衝撃波は勢いを消す事なく、壁へと突き刺さる。
その跡は一つだけに留まらず扇の形を描くように、五つの跡を残していた。
「……調子がいいな」
クレアは額から流れ落ちる汗を袖で拭いながら言った。
魔法が発展した世界でも剣の貴族であるフォーリス家が上流貴族としていれるのは、この剣技があるからだろう。
一の閃 白虎
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