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―――闘技場。
クレアとグロムは横に並んだ状態で学校長の話に耳を傾けている。
だが、遂に模擬戦が始まると緊張を顔に映しているクレアとは反対に、グロムはつまらなそうな表情で落ち着く気配はない。
各クラスで整列している訳ではなく、思い思いの場所で話を聞いている生徒達の中にもその様な態度をとる人間はそれなりにいたのだが、グロムのそれは特に顕著であった。
「おい、もう少し落ち着くんだ」
見かねたクレアがグロムに小声で注意するが、当の本人は
「だってよぉ!!こっちは早くして欲しいっつーのに、爺さんの話が話がなげぇから仕方ないだろ!!」
いつも通りの大声で返す。
その行為の愚かさにグロムが、はっ、と気づいた時には既に遅く、学校長から麻痺魔法をかけられる羽目になってしまった。
「フローレン君、もう少し静かにして欲しいのう」
学校長が威厳たっぷりの声でグロムに言った後、周りを再度見渡し
「……わしの話が長いという生徒が居たので二学年の模擬戦を今から開催する!!」
少し投げやりな調子で開催を宣言した。
雄叫びをあげる生徒達を余所に、未だ体を痺れさせ這いつくばるグロムは
「くっ、が……、クレア、助けて」
いつもの大声はどこへやら、クレアへと助けを求める。
それに対し、しばらく思案するクレアであったが天使のような微笑みを浮かべた後に
「……悪い、俺は回復魔法も苦手なんだ。ここに居てやるからもう少し痺れていろ」
それを聞いたグロムは絶望しきった表情を浮かべ、
「……こ、この薄情者」
と言ったきり何も口にしなくなった。
その後も、グロムが動けないのを良いことにクレアはグロムの様々な部分を鞘で突いていた。
つつく度に、ぐわっ、ぎゃっ、等の反応が返ってくるため、楽しげな表情を浮かべるクレアであったが、その表情は新たな人物の登場で完全に消え去る事となった。
「ふふふ、あんた達随分と余裕じゃない。あっ、もう負けると分かってるからか」
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