プロローグ

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4月29日…教室内……… 「おっはよー」 マロンペーストの髪色をしたセミロングの少女、千代は椅子にポツンと座っている長髪に近い髪型の男の子に話しかけた。 だが、少年は何も言わず、黙々とペンを手持ちのファイルに走らせている。 千代は呆れた風にため息をつきながら、腰に手をついて彼を見下ろした。 彼の名前は岩田貴之と言って、千代の小学生からの幼なじみである。 「知ってる?内の学校、また出たんだって…」 「何が?」 「何がって幽霊に決まってるでしょ」 千代が通う学校、神城高校では二週間ほど前から幽霊が見えるようになった。しかも幽霊が見えるのは二年の間だけという、おかしなことだ。千代は三年の為か、見えたことがない。 「私達、心霊調査部なんだからさー解決しようよー」 心霊調査部とは千代が新体操部と掛け持ちしている部である。 主に不思議なこと等が起きた事件の記事を集めたりしている。例えば、不可解な事件や超常現象の調査とかである。 「あれは、依頼が来てないから調べるつもりはない。それに、興味がない」 千代には目もくれず、仏頂面でファイルの紙と向き合っている。 「じゃあ、依頼が来たらやるんだね」 千代はニヤつきながら言った。 「千代、いらないことをするなよ」 貴がにらみつけてきた。だが、千代はそれを見ようとはせず、背中を彼に向けて、気付かれないように笑んだ。  
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