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縁が教室に着く頃には既にほとんどの生徒がそろっているようだった。
誰も座っていない席が点々としていて嫌でも目立っている。
教壇のほうを恐る恐る確認したが、幸運にも先生は来ていなかった。
「なんとか間に合ったか。えっと、”1-D”……よし合ってる」
入口のドアの上のプレートを確認してから中に入り、学生証と机の上の番号を照らし合わせながら自分の席を探す。
さほど苦労することもなく席を見つけ、ふと右隣に視線を動かすとどこかで見たことのある茶色の髪が目に入った。
「おう。お前もD組だったんだな」
「……なんであんたが同じクラスでしかも隣なのよ」
「朝は悪かったな。俺は音村縁、これからよろしく。お前の名前は?」
「あんたに教える名前なんてないわよ、まぬけ」
少女は相変わらず眉間にしわを寄せたまま答えた。
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