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「あぁ、濡れた濡れた…。」
少年が少し広い洞窟の中に、どっと降り出した雨をしのぐために駆け込んだ。
手のひらほどの大きさの布で顔を拭きながら外をうかがう。
「すぐには止みそうにないなぁ」
しょうがない、と一歩後ろに下がった。そのとき、こつんと足がなにかにぶつかった。
振り向くと黒髪の青年が座っていた。相変わらず瞼を閉じている。寝ているのかと顔を覗き込んでみた。
「なんだ?」
「わっ」
突然青年が口を開いた。
「ご、ごめんよ。寝ているのかと思って」
「……」
青年は少し不機嫌そうに眉をひそめた。でも瞼は閉じたままだ。
なんとなく自分より先に口を開いてくれたことに嬉しくて、ついぺらぺらと少年は喋りだしてしまった。
「昼間に笛を吹いていたヤツだよな?」
「……」
青年はぴくりともしない。でも少年は続けた。
「わたしは楽器は全く出来ないから憧れるなぁ。何処かで習っていたのか?相当腕のいい人に教わったのだろう。」
「……」
「そういえば、まだちゃんと自己紹介をしていなかったな。」
「……」
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