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「わたしは翔狼[ショウロウ]。特にこれといって行くさきもなく放浪中…というところかな。お前の名はなんという?感じからして旅人か?」
「……お前、馴れ馴れしいな」
やっと、というより痺れを切らして青年が口を開いた。
翔狼はちょっとだけ頬を赤らめた。
「え、あぁ悪い。で、でも、自己紹介くらいしてくれたっていいじゃないか。」
青年は本格的に不機嫌になり、わざとらしく溜め息をついた。
「いい加減にしろ。お前に名乗ったってこっちにはなんの利益もない。」
翔狼は少しむっとして言い返した。
「親しき仲にも礼儀あり、だ。」
「いつ親しくなった?」
「少し前に。」
「そんな覚えはないな」
翔狼はよりむっとして立ち上がった。でも落ち着けと自分に言い聞かせ、深呼吸をひとつした。
落ち着いてからまた座りなおし、はっきりと
「なら、話せるときに話してくれ。それまで待つから。」
青年は少し驚いたように眉をひそめた。
「…なんだと?」
言い聞かせるように翔狼は答えた。
「だから、話してくれるまで待つ。いつまでもな。」
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