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「撒いたか…。」
森を抜けて、近くの町の人ごみに青年は紛れ込んでいた。ふぅと一息ついて宿を探すことにした。しばらくしないうちに
「……なんでいるんだよ。」
翔狼が当たり前のようにまた後ろに引っ付いていた。
さすがに今度はこの場で切ってやろうかと思った。
「なんかねぇ、不思議と分かるんだ。気配かなぁ臭いかもしれないけど分かるんだ。お前がどこにいるのかが。」
「………」
「もしかしたら、わたしの探しているものをお前が持っているかも。それか関係があるとか」
翔狼は洞窟で雨宿りをしているとき、青年が聞いているいないを関係なく一人でよく喋っていた。
翔狼は行く当てはないが探し物をしているらしい。それ自体は誰も見たことがなく、この世に存在するかも怪しいモノで『漆黒の毛並みに白銀の瞳を持ち、周りからは災悪の元と、あまりよく思われていない』んだそう。毛並みというところから人間でないことは分かる。だが誰も見たことがないなんて話にならない。馬鹿がかわいそうな具合に騙されてると青年は勝手に思っていた。
どうしても翔狼は付きまとってくる。青年は諦めて何もないものとして扱うことにした。
「ここの町はたくさん人がいるねぇ、きっと貿易が盛んなんだろう。知らないものがたくさんあるぞ」
しつこい上に世間知らずときた。諦めろ。気にするだけ無駄だ、と青年は自分に言い聞かせながら宿探しを進めた。
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